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美濃研修 和紙と町並みがつくるまちづくり

先日、地球の会設計セミナーに研修に行きました。

行き先は・・・
「道の駅 美濃にわか茶屋」

「岐阜県立森林文化アカデミー」

「NIPPONIA美濃商家町」

「伝統的建造物群保存地区 うだつのあがる町並み」

「みんなの森メディアコスモス」

地球の会という国産材を使用した家づくりを行っている全国の工務店の団体が
開催する設計者を集めた研修の第2・3回目でした。

見学させていただいた建築物の完成度は言うまでもなく高いのですが、
各建築を計画するに至るまでのプロセスにも、それぞれ美しいストーリーがあり、
それらに触れることができたとてもよい経験になりました。

なかでも、
NIPPONIA美濃商家町の「松久邸」は、
江戸時代から和紙産業で栄えた町である美濃に、空き家として埋没してしまっていました。
町全体が伝統的建造物群保存地区内に位置し、松久邸自体が元々美濃紙商の町屋であったこともあり、
「歴史的建造物の保存」・「町並みの保存」・「地域の観光資源としての利活用」という目的の元、官民連携で古民家改修がおこなわれたものになります。

建物のプログラムは、
元々、美濃紙商であったこともあり、ワイナリーならぬ、和紙を扱う「ワシナリー」、
「アートギャラリー」、「ホテル(分散型:点在する町家を個々に改修し、それぞれを客室しているもの)」の機能となっていました。

↑アートギャラリー↑ワシナリー↑ホテル 

建築学生の卒業設計(≒卒業研究)で度々理想的に題材とされる内容を、
見事に官民連携のもと体現されておられました。

ただそのためには、やむおえず取り壊しも考えられていた松久邸所有者さん、それを食い止めるべく行政を巻き込みながらまちづくりにアプローチされた民間設計事務所さん、行政、それぞれの立場でうまく合意形成が行われた賜だと思いました。

取り壊して新しく今っぽい建物を建てたほうがよい、という方もいらっしゃるでしょうし、改修するにしても、どこまで新しく改修して何を残すのかが共有できていない、そもそも観光資源としての理解できないという方だっていらっしゃってもおかしくありません。立場が違えば考え方も変わるからです。

スクラップアンドビルドのまちづくり(いわゆる駅前再開発とか・・・)は、市街でよく行われがちな一過性のまちづくりですが、
古いもの、歴史、文化的背景を踏まえ、その価値を膨らませていくまちづくりの方が永続性はあると思います。

良いモノだからこそ、末永く使い続けられる。

家づくりも、まちづくりも考え方は同じだなと思いました。
美濃という町には、その価値感が、建築、町、人に広がり、根付いていました。
同じ価値観を共有しあいながら、一つの建築計画をスタートさせるプロセスづくりの美しさに感動しました。

家づくりも、様々な立場の人が同じ価値観をもって計画をしていけるか、それが結果的に良い家づくりにつながる、
忘れがちな当たり前のことに気付かされる研修でした。

ぜひ、美濃にお金を落としに、次の旅行の計画をたてられてはいかがでしょうか。


辻尾


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