コアー建築工房は、国産材を使った木造住宅を建てている工務店なのですが、時にはデイサービスや保育園などの施設建築も行っております。
今日、紹介する『総合生活支援センターそら』は、2015年に当社で建てさせて頂いた、堺市南区栂にある大型のデイサービスセンターなのですが、この11月に、一部改修工事をさせて頂きました。本日はそのレポートです。
同施設の完成間も無いころの写真がありますので、まずはそれをご覧ください。





木造でも、これだけ大規模な施設建築が出来るという事に、驚かれたのではないでしょうか?
国産木材を現し(見える状態)で構造材に用い、自然素材をふんだんに使い内装を仕上げる、といったことが当社の建築スタイルであり、こちらの施設そのような手法で建てられております。
なので、施設利用者はもちろん、そこで働かれるスタッフの皆様も、自然素材の優しさに包まれて、心身ともにリラックスして頂ける、と思い込んでおりました、私は・・・。
私(梅谷)が担当者として、“そら”様と、お付き合いさせて頂くようになったのは、お引き渡しから2年ほど経った頃、「建具が壊れたから見に来てほしい」とのご依頼があり、メンテナンスにお伺いしてからの事と記憶しております。
訪問した際、壊れたという建具の状態を見て驚いてしまいました。お引渡ししてから2年程度しか経っていないとは思えない状態であったからです。
木製フレームに、自然木の樹皮を表面に張り付けられた合板を張って作るという、コアーではお馴染みのスタイルの建具に、戸先にゴムのクッションを付けて、手が挟まってもケガをしにくいようにしたり、また開け閉めをしやすいように、木製の大型の引手を付けている、といった特別仕様を加えたものだったのですが、すでにいろいろな部分が壊れたり、取れたり、割れたり、ガタついたり、といったことになっていたのです。
木をはじめとした自然素材は、確かに身体には優しい。でもその反面、優しさは壊れやすさの原因になることもある、という現実を突きつけられたのです。
その後も、いろんな細々としたメンテで何度もお伺いしていたのですが、こういった施設の運営、維持管理は大変なのだろうなぁ、とつくづく感じておりました。
今回の改修は、それまでと違って、ある程度まとまった工事となりました。そこで、「当社は、こんな工事もやっているのですよ」とブログで紹介したく思い、先方のご担当者様に記事を書いてよいかを打診致しました。「知的や身体に障害のある方々を対象とした短期入所施設(“そら”様のホームページより)」の事であり、デリケートな問題も含んでいると思ったからです。
ご担当者様は、快く「施設長に確認してみますね」と言ってくださり、返事はすぐに頂けました。「書いてよい」というご承諾に加え、今回の工事が「赤い羽根共同募金」の助成によるものという事を盛り込むと、コアーが「社会貢献している会社である」とアピール出来ますよ、というアドバイスまで頂きました。ありがとございます!
さて、ということで今回の改修内容のレポート開始です。
まずは、窓周りの工事です。
この施設は、建物中央に中庭があり、そこを囲む4面には掃き出し窓が連なり、大きなサッシが取り付けられています。アルミフレームの建具には、安全を考慮して、ガラスではなく、透明な樹脂板がはめこまれているのですが、この樹脂板に、飛散防止と目隠しを兼ねたシートを貼りました。



貼ると摺りガラスのようになるシートであったため、施工後はまったく中庭が見えなくなってしまい、せっかくの解放感が失われてしまいました。なぜ、わざわざこのような事をするのか分かりますでしょうか?
答えは、所者の中には、透明だとそのまま中庭に向かって突っ込んでいく方がおられるからです。また閉塞感がある方が、安心されて落ち着く方がおられるからでもあります。
畳スペースに面した大型の掃き出し窓に、シャッターを取り付けました。



この窓にも、先の窓同様にすりガラス状になるシートを貼ったのですが、さらにシャッターを取り付けたのです。このサッシは、以前入所者方の方が突っ込んで行き、中桟が大きく外に向かって曲がってしまって修理をしたことがあります。シャッターの取り付けは、それを防ぐための2次的な対策ということになります。
通路やリビングの壁に、シナベニヤを張りました。新築時に、すでに腰部分には張っていたのですが、今回はその上部の壁に張り足すように施工致しました。



トイレ1か所を、大便器から小便器に取り替えて、それに伴う内装改修をしました。



このブログ記事を書くにあたり、先方のご担当者様に、質問をさせて頂きました。「壁にシナベニヤを張ったのは補強だったのだろうが、便器を取替えた理由が分からないな」と思ったからです。
頂いた答えは、次の通りです。
「壁はクロス剥がれ予防です。剥がれ始めたら気になって仕方がない方への配慮。トイレは学校、作業所で慣れ親しんだ形で、自立した排泄ができることが目的です。排尿、排便とケアする我々も彼らの気持ちが分かりやすくなります。排尿の際、我々も少しの残尿感など、非常に不快ですよね?男性は立位の方が良いと聞きます。これは記事に出来るか微妙ですが」
言っていませんでしたが、先方のご担当者は女性です 笑。
壁にシナベニヤを張った理由は、予想したものと違っていました。便器の取替えの理由に至っては予想も出来ないものでした。
長年、同施設のアフターメンテに携わっていながら、何も分かっていなかった、ということです。
ご担当者様には、「施工前にお聞きすべき事だった」とお詫び申し上げました。私なりにいろいろ考えて、各箇所を施工したつもりではおりましたが、本当の理由を分かっていれば、さらに細かい配慮が出来たかもしれません。
今回の工事、少しは社会貢献が出来たのでしょうが、同時にたくさんの反省材料も頂きました。心構えも新たに、引き続きお付き合いさせて頂けたらと存じます。
最後に、ご担当者様はじめ、そら のスタッフの皆様にエールを送りたいと思います。きつくて大変なお仕事だと察しますが、皆様は毎日誇りをもって取り組んでおられることでしょう。頑張って下さい。間接的にはなりますが、ずっと応援させて頂きます!
(梅谷)


