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「トレース水彩画」という技法で描く、コアー建築工房社屋

今日は、「水彩画」と「コアー建築工房社屋」に興味がある方に向けての発信です。

・・・・うーん、あまりいないかもしれないな、この組み合わせに反応する人、と不安を抱きながらも、スタートです。

 

「トレース水彩画」という技法をご存じでしょうか?

水彩画家の森田健二郎さんという方が提唱されている水彩画の技法で、簡単に説明すると、「写真をトレースすることで下描きをし、それに着彩をする」といったものです。

このブログのアイキャッチに使用したのが、私がその技法で描いた「コアー建築工房社屋」の絵です。木々の緑あふれる傾斜地に建てられた、在来木造3階建の当社社屋の魅力が伝えられたら、と心を込めて(下心とも言います)描きました。

さて今回は、その制作過程を紹介したいと思います。ここから先は、水彩画に興味のない方にとっては、ちっとも面白くないお話となりますので、そんな方はご遠慮なくスルーなさってください。

 

・・・・まだ読んでくれています?

ありがとうございます。そんな素敵な貴方に向けてお送りしたいと思います。

 

1.写真を用意する

用意した写真は、昨年の夏に撮ったコアーの社屋です(季節外れの写真でスミマセン)。

夏は、木々に囲まれたこの場所が、いちばん緑を濃くする魅力的な時期です。とくに午前中は、強い太陽光線が社屋の正面壁を照らし、濃い陰影のコントラストも鮮やかに、きりっとした姿を見せてくれます。

写真をトレースして下描きをしますので、描きたい大きさに写真をプリントアウトします。私の場合は、A4サイズに余裕をもって収まる程度の大きさにしました。

 

2.写真をトレースする

用意したものは、水彩用の画用紙(マルマンのVIFART B4サイズを使用)、カーボン紙、赤色のボールペン、仮止め用の粘着テープ(普通のマスキングテープを使用)。

画用紙の上に、プリントアウトした写真を置き、上部をテープで固定。トレースの状態を確認する必要があるので上部一方のみを固定し、めくれるようにします。

 

写真と画用紙の間にカーボン紙を挟みます。

あとは、赤のボールペンを使い(赤を使うのは、なぞったところがわかりやすいから)、ひたすら写真画像のアウトラインに沿って、なぞっていくのです。

 

トレースが終わった状態。

手作業感を出したいので、基本的にはフリーハンド、「線の曲がりも味のうち」という方針でトレースするようにしているのですが、今回の題材の写真は、長い直線部分が多かったため、一部定規を使いました。ただし、図面書きのように真っすぐスパッと線を引くのではなく、わざとペン先をくねらしながらフリーハンドっぽくしました。

 

3.陰影を付ける

用意するものは、漫画墨汁(開明というメーカーの物を使っています)、筆を数種、マスキングシート(着彩の時も使います)。

漫画墨汁を水で溶いて、濃さを確認しながら重ね塗りし、トーンの微妙な調整をしていきます。着彩時には難しいとされるトーン調整を、モノクロで先にやってしまうのです。

まず、庇やオーニングの出が壁に描き出す、濃くて直線的な影の部分から塗り始めました。

マスキングシートを貼り付けて、塗る部分をくり抜き、濃い目の水溶き墨汁を塗り込みます。何度か塗り重ねたので、少しグラデーションになっているのがわかりますでしょうか?

 

その他の部分も、写真を見ながら陰影付けしていきます。

この段階のイメージは、「露出過多のモノクロ写真」です。

漫画墨汁を使う理由は、乾くと耐水になり、後からに塗る絵の具と混ざらないから。この工程でしっかりトーン付けをしておけば、次の工程では濁りを気にせずに、色の塗り分けに専念できるというわけです。

 

4.水彩絵の具で着彩

用意したものは、透明水彩絵の具(ホルベイン社の物を使用)、筆数種、パレット、絵具皿、筆洗、マスキングフィルムなど。

写真を見ながら、透明水彩絵の具で着彩していきます。手順としては、大雑把なところから、薄い色から、というのがセオリーです。

バックの空から塗り始めました。

建物や木々、それと画面の外にあたる部分にはマスキングして作業しております。

空の部分全体に大振りの筆で水を塗り、濡れているうちに青色の絵の具を落としていきます。自然な滲みを利用した、透明水彩画ならではの技法です。

空の青が映りこんでいる窓ガラス部分にも、同じ青を塗りました。

 

続いて、主役である建物を着彩。

 

周りの木々へと着彩を進めていきます。

透明水彩技法では、絵具に白を混ぜません。明るさの調整は水の量です。

白を使うのは、仕上げの段階でのハイライトを入れるとき。この白はガッシュやポスターカラーなどの不透明水彩絵の具を使います。

 

細かい部分の描き込みをして、ホワイトでハイライトを入れ、完成です。

 

使った画材類を、改めて写真でご紹介。
絵具はパレットに出して、固めて使用しています。
減ってきたら継ぎ足すようにし、いちいち洗い流しません。

 

「トレース水彩画」では、写真をトレースするので、デッサンが狂いません。

「絵を描こうかな」と思ったとき、最大の障壁になるのが、「下描きデッサンが上手く描けない」という事ではないでしょうか。

その点この技法では、その障壁を完全スルーできてしまうので、どなたが描いても、「この、へたくそが!」とはならないのです。

なので、仕上がりのクオリティーの決め手は、「陰影付け」と「着彩」の技術となります。が、これも写真という、ある意味完璧な「お手本」があるので、「忠実に・着実に・再現」という方針で制作を進めればよいかと思います。

表現力を向上させるには「透明水彩絵の具」という画材の使い方に、慣れ親しんでもらう必要がありますが、絵をかくのが好きだという方にとっては、それはむしろ一番楽しいことに違いありません。

 

昨今のコロナ禍の中、やむなく巣ごもりの時間が増えているのではないでしょうか。

ときには気分転換に、トレース水彩画を楽しんでみませんか!

トータルな制作イメージは、「大人の塗り絵」を下描きからやってしまおう、といった感じなのですが、その下描きのベースになるのは、貴方自身が撮られる写真だから、完成した作品は、世界でたった1枚の完全オリジナル作品になるのですよ、値打ちが違うでしょ!(←気分的にだけ、ですけれどね 笑)

手近なところで、「貴方がお住まいの家と、それを取り巻く風景」から始めてみるのは如何でしょう?

外に出て、ご自宅の周りを歩きながら、何枚かの写真を撮り、その中から描きたいアングルの物を選び出し、プリントアウト。それだけで下描き用ベースの出来上がり!

あとは、レッツ トレースです。

(梅谷)