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色あせていくものから感じる美しさ

とある物件で、
お施主様が所有されていた建具を、新築工事にて再使用致しました。

単純にそのままを再利用できればいいですが、なかなかそれは難しく、やはり加工は必須。

今回、そのなかでも、錠の加工に一つ工夫がみられた。

さも当たり前のように佇んでいるこちらの錠(ネジ締り錠)も、
実は別の建具(再利用できない建具)から錠だけを取り出して使用している。

細かな部品も、一つ一つ丁寧に目を凝らせば、キラリと光るものが隠れている。

短絡的な発想だと、新しい錠を買ってきて取り付ければ「機能」としては充足するが、
お施主様がわざわざ使用できそうもない建具を使えないかと、丁寧に保管されていた背景を踏まえると、余すところなく再利用できたのは満足いただく一助になったのではないかと思う。

とても小さなことではあるが…

当然、本件、かなり稀なケースであり、たくさんの条件が重なっている。
お施主様の意向・考え、建物条件などが重なっての決定であったと思う。
・多くの建具を保有されていたこと。
・古いものに対する美意識にご理解があった。
・再利用の建具を取り付ける部屋用途が、ネジ締り錠で十分のセキュリティであったこと。

世に云う「侘び寂び」の発想といいますか、
経年変化で、廃れていく、モノ寂しい様のなかに、豊かさや美しさを見いだす。

視覚的な情報だけではないところでの、文化的感性を私も磨いていきたい。
そのために、まず公私共に、時間を大切にしていきたい。

今年の書き初めで選んだ一文字「時」。

辻尾


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