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玄関にはじまり、玄関に終わる

こんにちは。

梅雨明けか、と思うくらいの気温上昇に滅入ります。

本社の駐車場側の玄関前の植栽が茂るとともに、雨風でボロボロと葉が落ち、それを毎朝掃き掃除、ひと汗かいて業務に戻る今日この頃。

ふと、玄関について思ったことを書いてみたいと思います。

「建築の設計は住宅に始まり、住宅に終わる」と聞いたことがあります。

人類の祖先は、厳しい自然環境や外敵から身を守るため、洞窟や岩かげなどに住んでいました。

住宅の本質は、そこから「シェルター(身を守るための避難所)」とも言われ、他のすべての建築は住宅から機能分化したものと考えられていたりします。

住宅には他の建築にも通じる基本的な事項が実は数多く含まれていたりします。その一つを掘り下げてみたいと思います。

そこで、

一例として住宅の「玄関」です。

住宅の玄関は、単なる出入口ではありません。

靴を脱ぐところであり、

「来客と応対する場所」でもあります。

また、外部に対しては、その建物の入り口の位置を示すとともに、住宅の「象徴」として一種のシンボル、いわゆる「顔」になる部分で、住宅デザインの中でも重要な位置付けにあると思います。

一方、

公共建築(美術館、飲食店、オフィス、ホテルなどなど)でも、この住宅の「玄関」機能は、名を変えて存在します。エントランスホール、アプローチ、シークエンス空間など。(横文字になっただけでは??笑)

これら空間設計の目的趣旨は、先程の住宅の「玄関」で説明した内容と同じです。

例として、オフィスビルのエントランスホールであれば、靴は脱ぐことは稀ですが、来客を迎え入れる場所=応対する場所、としての機能が強くなります。

その企業のブランディングにも起因する空間になりますので、設計時は、床面積を大きめに取り、吹き抜け空間としたり、仕上げのグレードも他よりもあげたり、街並みに対して大きな開口部(カーテンウォール)で開放感をとったりと、企業の透明性や来客を迎え入れるおもてなしの表現として、エントランスを設計しようします。

次に少し具体的に、住宅の「玄関」の考え方はというと•••

まず、住宅の延床面積とのバランスを考慮して、無駄のない程度で、床面積も極力大きくとりたいところ。それは、下足箱や傘立置き場、来客空間であるからです。

住宅の「顔」であるので、玄関扉をくぐった先の見え方についても、どっしりと迎えいれる雰囲気となるよう幅広に敷台や框を設け、「構え」にも気をつけたいと考えたりします。

玄関には土間部分(踏み込み)と一段高いホール(取り次ぎ)部分を基本的には計画します。(もちろんバリアフリー化の場合、段差を極力解消します)土間面と室内床までの立ち上がり寸法が2530センチ程度にしているのは、床に腰をかけて簡単な来客対応をするためでありながらも靴を履く行為に都合が良いからです。

ここにも来客への応対という目的が表現されています。

ほかにも、暗くなりすぎないように、ちょっとした自然光を取るために明かり取りの窓も設けたいですし•••玄関扉の素材感にも実はこだわりたかったり•••

玄関だけでも、もう考えたらキリがありませんね。

前述の通り、玄関だけを取り上げても、

住宅の空間には、他の建築にも通じる基本的な事項(考え方、設計上の気配りの仕方)が実は数多く含まれているのです。

私は、別に住宅でなくても、

旅先で出会った珍しい建築、日常に溢れるたくさんの建築、毎日の生活のさまざまなところからも、住まいづくりにつながるヒントは隠れていると思い、日々を過ごしていたりします。

毎朝の会社の顔、玄関の掃き掃除ひとつも、私は、会社で働く人=住まい手の1人として「玄関」の意味が埋没しないよう、丁寧に住まうということのお手本だと思っています。結果的にそれが会社のブランディングに繋がっているとも思います。

見栄えの話ばかりが取り上がってしまいましたが、もちろんのことながら、私たちコアー建築工房は、内側の見えないところにまで、気を配ることは忘れておりません!

言うまでもなくですが。

辻尾

 

 

 


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