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引違いの建具

ご自宅の引き違いの窓や扉、向かって左側の建具が奥になっていませんでしょうか。

引違の建具は原則的に右側が手前に来る右勝手になるようになっており、これにはいくつかの理由があります。

 

ちなみに建具が3枚でも然り。すべて引き込んだところを想像するとわかりやすい。

 

我々の暮らす日本には和服を着る文化があり、和服を着る際、襟は必ず右側を前にして着ます。これは柔道の道着なども同様で、逆に左側を前にして着るのは「死に装束」と言い、亡くなった方にお召し物を着せる際に用いられる用法であるため縁起の悪いものとして扱われます。

これを建具にも同じ見方をすることで、「縁起が悪い」というとらえ方をしたり、現代でも落ち目にある状態を「左前になる」とも言われるように、そうならないようにと「ゲン担ぎ」の意味などでも右側の建具を左側の建具に被せるように手前へ出すことが極めて一般的にとらえられる所以と言われています。

 

その他、使い勝手の面でも右勝手は理にかなっていると言えます。今でこそ違いますが、昔の日本人は左利きを右利きにわざわざ矯正するなどでほとんどの人が右利きであったため、建具が右勝手であることで引戸を開け閉めをしての部屋への進入が体の向きを変えずに行え容易であるという地味な利点があります。

部屋に入るとき、左側についている引手に右手をかけて戸を開けた場合、部屋に入ると戸を開けきった時に自然と手元の辺りに裏側の引手が来るかと思います。

これが同じ状況下で左勝手だと右に引手がついている分スムーズな動作ができないという訳です。

 

とは言え、間取りなどの関係でやむを得ず左側が室内側に来る左勝手になる場合や、先に挙げたような例に関しても、洋服が主流になり男女でボタンのついている位置が左右で差別化されていたりすることもあってか左勝手の建具もたまに見るようになりました。

また4枚組の引き違い戸などは両サイドの建具が奥側になり、中の2枚が手前になるなど違った納まりのものもありますが、あれは引き分けて使うので例外でしょうか。

 

何気ないところにも様々な理由や由来があって今のかたちに落ち着いているというのが面白いところだと感じます。

余談ですがサッシと言えば最近の寒い時期には朝窓辺に露が浮くので、カビが生えないように毎日少し窓を開けて換気をするよう気をつけましょう。

 

(後藤)

 

 


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